高知の伝統的技術の継承について 平成28年2月定例会(予算委員会)
午後3時45分再開
○桑名委員長
休憩前に引き続き会議を開きます。一問一答による質疑並びに一般質問を続行いたします。依光委員の持ち時間は60分です。御協力をよろしくお願いをいたします。
○依光委員
予算委員会2日目、最後の質問の機会をいただきました。私にとっては、待ちくたびれたではなくて待ちわびた質問機会でございます。60分間よろしくお願いいたします。
1中山間対策について
(1)小さな集落を守るための施策について
私はこれまで、高知県の活性化について地域地域の集落を単位とした議論をさせていただいております。高知県の歴史ある集落を守っていくことが多様性ある土佐文化を守ることにつながり、土佐人としてのアイデンティティー、誇りにもつながると信じているからです。
平成25年9月定例会で、高知県が過去に行った集落調査についてホームページに公表してはどうかと質問させていただき、すぐに対応していただきました。検索サイトで高知県と集落調査の2つのキーワードを入れていただければ、中山間地域対策課の、過去の集落調査についてというページで国勢調査の結果をもとにした集落別の人口推移を昭和35年から平成12年まで見ることができます。
ちなみに、私の住む家は中村という集落区分に入ります。この中村は地図にはない地名で、回覧板とか氏神様をお祭りする単位として機能していて、生活する上で最も身近なコミュニティーの単位となっています。ちなみに、大字は楠目といい、中村のほかの小字としては、フラフ工場のある談議所、予岳寺のある予岳、ゴルフ場のある油石、伏原大塚古墳のある伏原、そして平田、前行の7つで構成され、明治初年には楠目村という単位でした。その後、明治22年の町村制の施行により大法寺村、植村と合併して大楠植村、そして土佐山田町、香美市へと合併して今に至ります。
1つ要請をさせていただきます。平成17年の県の集落調査は、中村の集落区分ではなく大楠植村の区分で人口があらわされ、平成23年度の平成22年分は、高知県集落の実態調査に重きが置かれたため個々の集落人口の記述はなく、少し残念に思います。平成27年の国勢調査に基づいた集落調査も来年度行うと思いますが、その際にはできるだけ詳細に、かつ過去のデータとの連続性が保てるようつくっていただきたいと要請させていただきます。
さて、私がこだわる昭和35年時の集落区分ですが、過去の高知県政において、農業センサスの調査区をもとに市町村の実情に応じて独自に整理した区分であるとお聞きしています。私は、この集落区分を使って、国の地方創生の議論や尾﨑県政のあらゆる課題解決についての新たな視点が生み出せるのではと考えています。簡潔に述べれば、高知県のあらゆる課題を文化的・歴史的背景を持つ小さな集落コミュニティーで解決していこうということになります。このコミュニティーは、自分の集落は自分で守るという自主自立の合意形成を最も醸成しやすい単位としても評価しています。
まず最初に、人口減少が進む日本の中のさらに人口面で厳しい高知県の集落において、地域地域の小さな集落を守るためにどのような施策を展開しようと考えているのか、中山間対策・運輸担当理事にお聞きをいたします。
○金谷中山間対策・運輸担当理事
本県の中山間対策、これは総合対策といたしまして3層の取り組みで進めております。成長戦略とアクションプランの取り組みが届きにくい地域地域の小さな集落対策には、3層目の対策に当たります集落活動センターの取り組みを進めております。この取り組みによりまして、しっかりと集落機能の維持・再生を図ってまいりたいと考えております。
また、そうした取り組みが届かない地域につきましては、必要とするところには生活用水の確保のための環境整備など、住み続けていく上で必要な生活支援の取り組みがしっかりと行き届くように取り組んでまいりたいと考えております。
○依光委員
ありがとうございました。
(2)集落活動センターの立ち上げについて
まずは、わかりやすい中山間対策から議論を深めていきたいと思います。
高知県は、中山間対策の最後の切り札として県内130カ所を目標に集落活動センターの導入を進めています。来年度の予算でも、開設をスピードアップすべくパンフレットの作成やフォーラムの開催、また開設した集落活動センターの情報交換を目指して連絡協議会も立ち上げるとしています。
私は、高知県の集落を守っていくことは待ったなしであると感じておりまして、手を挙げた地域を県が応援していくことに加え、県が集落活動センターをつくるべき地域について戦略的に働きかけていくことも重要ではないかと考えるところです。
香美市を例に集落活動センターをつくるべき場所を選定するとすれば、それは消防団の分団のある集落であると思います。香美市には、現在、旧土佐山田町に9つ、旧香北町に6つ、旧物部村に4つの消防団があります。その中で、旧土佐山田町だけは人口規模が特に小さい3つの分団で考え、香美市内で最終的に13カ所を目指します。ちなみに、旧土佐山田町は、佐岡、新改、繁藤の3カ所、旧香北町は美良布、暁霞、日ノ御子、永野、猪野々、西川の6カ所、旧物部村は大栃、岡ノ内、神池、五王堂の4カ所となります。過去には、これらの集落にはそれぞれ小学校があったのですが、現在では物部町大栃に大栃小学校、香北町美良布に大宮小学校と旧物部村と旧香北町には小学校が1つずつ、中学校が1つずつとなっております。また、土佐山田町の佐岡小学校と繁藤小中学校はそれぞれ平成25年に休校となりました。
消防団の分団のある集落は、自分の地域は自分で守るという意識を持った住民が多くいらっしゃって、過去には小学校もあったという背景から近隣の集落に比べ人口が多い拠点集落です。
こういった集落の人々は責任感が強く、先の見通しや経営についての完璧さを求めるがゆえに、集落活動センター設置に十分な地域の力があっても設置に向けて手を挙げないということも感じます。
集落活動センターの立ち上げについて、小学校区または中学校区単位の集落構成で考えていると思いますが、消防団の分団も小学校区単位の集落で構成されていることが多く、また分団の屯所のあるところはその集落の中心地となっています。
そこで、県として集落活動センターの立ち上げについて消防団の分団のある集落を重点集落と設定し、戦略的に働きかけるお考えはないか、中山間対策・運輸担当理事にお聞きをいたします。
○金谷中山間対策・運輸担当理事
集落活動センターの活動の範囲をどう選択するかは、地域や市町村の考えによることを基本としており、あらかじめ設定した要件で進めていくという方法が地域で受け入れられるのかという懸念もございますが、消防団の分団がある集落などはセンターの候補地として有望と思われますので、候補地の検討の際にはそうした視点も意識しながら市町村とも協議をしてまいりたいと考えております。
○依光委員
ありがとうございます。
当然、市町村が考えていかんとということはよくわかります。香美市において自分がすごく感じるのは、先日の土曜日に香美市の合併10周年ということでセレモニーがあったんですが、私が言われることに、合併効果って本当にあったのかという話をよく聞きます。そういう意味では、今の旧物部村においては大栃小学校、大栃中学校、旧香北町においては大宮小学校と香北中学校、ここを残すためにもう自分は待ったなしだと思っていまして、手を挙げることを待つという時間的余裕が本当にあるのかなというふうにも思うんです。
ですから、市町村との連携を地域本部も頑張っていただいておりますんで、また私もやっぱり力を入れて住民の方とも議論させていただきたいと思いますが、この辺は戦略的にということも、また検討をぜひしていただきたいと思います。
(3)T型集落点検について
次に、T型集落点検の導入支援についてお聞きをいたします。
高知県の中山間地域に住む多くの人々は、高度経済成長期に地元小学校を統廃合により失い、農協の合併により地元出荷場を失い、また市町村合併により役場機能まで大きな町に奪われていきました。そんな中、中山間地域の住民の皆さん方の中には、諦めの気持ちが先に立ち、集落の将来について、自分たちがいなくなったら集落が消滅するのも仕方がないと覚悟を決められている場合もあります。
今議会においても、県は尾﨑知事を先頭に集落を守るんだという意気込みを語られていましたが、私も集落の皆さん方に踏ん張っていただきたいし、希望を持てる何かを提供できないかと考えています。
そこで、私はT型集落点検を実施して、集落の持つ潜在的なマンパワーを見える化して、今は外で生活している地元出身者を集落の頼もしい助っ人にできるような環境をつくり出したいと思います。
このT型集落点検は熊本大学の徳野教授が提唱されている方法で、家系図を描いた際のお父さん、お母さん、子供という関係がT字型に見えることからつけられ、集落に何らかの縁がある地元出身者を全て書き出すというものです。集落の人口推計を見れば、10年後に人口半減などという数字が示され、暗い気持ちになることが多いのですが、このT型集落点検は集落の潜在的な応援団を明示でき、まだまだやれると前向きな取り組みを生み出せます。
県内で大学生が地域に入ってやっている事例もありますが、改めて手順をお話しします。1、模造紙に集落の地図と家を書く。2、家ごとの家族構成を家系図の形で書く。現在住んでいる人と集落外に出ている人を色分けする。3、空き家やかつて家があった場所でも同様の作業をする。4、世帯ごとに丸で囲み、他集落の世帯は住所も書く。5、他集落に住んでいる人と現在集落に住んでいる人とのきずなの深さを明示する。
集落を出た人に光を当て、集落の維持・活性化に協力してもらうというこのT型集落点検は非常に有効な手段と思いますが、県としてどう評価をしているか、また取り組みを広げるために市町村や大学に働きかけるとともに、大学生などが地域へ入っていく活動のバックアップができないか、中山間対策・運輸担当理事にお聞きをいたします。
○金谷中山間対策・運輸担当理事
お話のございましたT型集落点検は、小字単位の集落で行う地域力を再確認するための話し合いの手法として有効であるとお聞きをしております。センターの仕組みを住民の方に説明する際などにT型集落点検による手法を紹介したこともあり、今後も研修や協議の場で紹介をしてまいりたいと考えております。
○依光委員
ありがとうございます。T型集落点検というのは、今自分が県政とか県議会の中で余り聞くことがなくて現場では結構使われているんだと思うんですが、またそこら辺は情報共有をしていただければと思います。
やっぱり、集落の人口は減っていくんですけれども、集落によっては例えば大きなお祭りのときに住民みんなが集まるとか、あとは平山地区とかで運動会をやったりとかして、そういうときに昔いた人が集まると、そういう人たちが休みの日とかに集落に入って田んぼを手伝うとか、やっぱりそういうことはすごくいいことだと思いますし、そういうことをやることによって地元の方も元気になるし、ルーツを知るということはやっぱりいいことだと思いますんで、ぜひとも進めていただきたいと思います。
(4)中山間地域での都市部からの避難者の受け入れについて
次に、南海トラフ地震対策と中山間地域の連携について質問させていただきます。南海トラフ地震発災後、高知市では長期浸水が言われており、発災1週間後において県全体の避難所の収容能力がいまだに約4万人不足するなど、長期の避難生活が予想されているところです。
そこで、これまで沿岸部と津波の被害のない中山間地域の交流を日ごろから行うことにより、いざというときには顔見知りが多い中山間地域で避難生活を送るという仕組みが議論されてきました。また、津波で家が流された被災者のために仮設住宅をつくる必要がありますが、中山間地域の使われていない空き家を行政が借り上げて改修し、いざというときに備えるという空き家活用促進事業も県内各市町村に広がっています。
一方で、沿岸部と中山間地域の交流をも目的としていた平成26年度の結による支え合い推進事業は、27年度には集落の維持・活性化については大学などによる地域との協働体制が確立されてきたためということで、集落活動センターや高知ふるさと応援隊の活動に集約され、廃止されました。
私は、いざというときには中山間地域の集落が都市部の住民を受け入れる体制づくりというのは非常に重要な視点で、できれば数値目標も盛り込んだ形で受け入れ可能人数のボリュームをふやしていくような仕組みづくりが必要ではないかと考えるところです。この交流拠点については、先ほど話をした消防団のある集落に防災拠点機能を持たせて集落活動センターとして機能強化できれば、かねてからの沿岸部と中山間地域の交流を推進することも可能となります。
現在、他市町村からの避難者数や受け入れ施設の収容能力を集計し、広域避難の検討を進めていますが、消防団の分団が置かれている集落における市町村が指定する避難所について、都市部からの避難者を周辺地域に加えて中山間地域で受け入れることも考えられると思いますが、危機管理部長にお聞きをいたします。
○野々村危機管理部長
広域避難につきましては、現在、県内を安芸、中央、高幡、幡多の4つの圏域に分けて検討を進めておるところでございます。
これらの圏域ごとにそれぞれの市町村において地域ごとで避難所における収容人数の過不足を調整するとともに、利用可能となる施設の洗い出しを行い、これらの耐震化や学校の教室利用など避難所の確保対策を促進してきているところでございます。
広域避難につきましては、できるだけお住まいの近くの市町村の避難所に避難していただくことが望ましいと思っておりますが、最大クラスの地震を想定した場合、現時点では発災1週間後で約4万人分が不足しておりまして、県内の全避難所のうち受け入れに余裕のあるものは全て活用しなければならないという状況であります。お話のありました、中山間地域にあった小学校などで地震対策に対する避難所としての条件を備えている施設については、受け入れの余裕がある場合は広域での避難所としてぜひ活用していただきたいというふうに思っております。
(5)受け入れ側の避難所への支援策について
○依光委員
続けて、受け入れ側の避難所において資機材整備や環境整備が必要と考えますが、その支援策はあるか、危機管理部長にお聞きをいたします。
○野々村危機管理部長
避難所への資機材や環境の整備は、簡易トイレなどの資機材や倉庫、防災井戸などの整備を補助の対象として、平成26年度から支援してきたところでございます。来年度からは、新たに避難所の開設方法や運営体制を定めた避難所運営マニュアルを作成したものに対して、補助率をかさ上げして運営に必要な資機材や環境整備を支援する予定でございます。
○依光委員
ありがとうございます。前向きな御答弁やったと思いますが、私がここで考えていただきたいのが、昔からあった集落というのは、そもそもそこに水と食料とエネルギーがあったから集落があったんだと思います。当然、水があるんで田んぼをして、そして食料を生産してエネルギーはまきとかそういうものがあるんで、高知県でも災害が多くて孤立集落になって助けに行かんといかんといって、行ったらおじいさんおばあさんは全然平気な顔をしていたというような話も聞くんですが、やっぱり先人の生きる知恵というか、電気がとまっても全然平気というような集落があったりもします。そこで思うのが、資機材整備というところも、例えばトイレをたくさんつくっておいて、集落活動センターになれば日常は大学生が行ったりして交流して、いざとなったら避難すると。
簡易トイレという話もありましたけれども、できるならば固定のトイレをつくっていただき、集落活動センターの試みと中山間対策の試みを一緒に整備できれば、かなり形になるんではないかなと思いますんで、また部局を超えて検討していただければと思います。
(6)中山間地域の健康寿命の実態調査について
次に、中山間集落と日本一の健康長寿県構想に関連してお聞きをいたします。
高知県は、県民の誰もが住みなれた地域で安心して暮らし続けられるためにということで、中山間地域での福祉サービスにも力を入れています。私は、このことに対して非常に頼もしく思っております。
高知県の中山間地域には70代、80代の方々も多くいらっしゃって、例えば家族とともにユズをつくって今でも働いているという方もいらっしゃいます。国の地方創生の議論の中で、都市だけに人口を集めるコンパクトシティー推進論や都市部での人口のダム論という話がありますが、不便な土地から便利な都市に人を移せというような議論は大きなお世話だと怒りを覚えます。交通の便が悪いところに住む人への医療・介護支援は非効率という暴論です。しかし、そもそも不便と言われているところに住んでいる方々は、身も心も健康な方が多く、医療費をたくさん使っているとは思えません。日常の生活の中で畑仕事などにより体を動かし、新鮮な野菜を中心とした豊かな食生活なのですから、一生涯を通じた医療費で見れば都会で一生を送る方よりもトータルで安いのではと思います。
私の仮説ですが、都会で一生涯過ごす方と中山間地域で一生涯過ごす方のトータルでの医療費を比べた場合には、中山間地域の方のほうが医療費が安いのではと考えます。現在、健康寿命ということが言われていますが、都会から中山間地域での生活に移ることで健康寿命を延ばすというようなことが証明できれば、都会から中山間地域への人の流れもつくれるのではと考えます。
先ほどT型集落点検の話をさせていただきましたが、集落にルーツのある方々に積極的に帰っていただくために、引退後は生まれ育った集落に帰ることが健康寿命を延ばすことになりますよというメッセージを送れないかと考えるところです。
中山間地域で生活する方々の健康状況を調べた調査としては、こうち健康・省エネ住宅推進協議会という組織が中山間地域に住む方の健康状態を調べています。寒暖の差が激しい中山間地域において、気密性が低い日本建築は冬は寒く暖房代が高くつく。また、暖かい部屋から寒い風呂場で服を脱ぐことは血圧の変動が激しくなり命の危険さえあるという、いわゆるヒートショックの危険性を主張しました。つまり、中山間地域の伝統的な日本建築に住むお年寄りは寿命が短いというような結論です。この結論は、伝統的な日本建築ではなく、気密性が高くて暖房代が節約できるプレハブ住宅や都市部のマンションに住むことが健康寿命を延ばせるという偏った情報提供です。個人的には、気密性が高く金属屋根で熱の影響を受けやすい現在主流の住宅は、夏場の熱中症やシックハウスなどでかえって寿命を短くすることになるのではと感じます。
人の健康を構成する要素には、食事、運動、睡眠時間などに加えストレスや住環境などあらゆる要素が絡みますので、非常に難しいことは承知しておりますが、都市での生活のほうが健康寿命を延ばせるという主張が強く思える風潮に、高知県が独自の根拠で反論することには意義があるのではと考えるところです。
そこで、高知県の中山間地域で自家消費の野菜を生産しながら生活している65歳以上の方々を対象とした健康調査を行い、中山間地域での集落に住む方々の健康寿命が都会の住民に負けない生活が送れるという証明ができるようなことが考えられないか、健康政策部長にお聞きをいたします。
○山本健康政策部長
国の健康寿命の算出方法の指針では、健康寿命の算出には調査地域の人口は13万人以上が望ましいとされており、人口規模がそれに満たない場合、健康寿命が極端に長くなったり短くなったりする可能性が高くなり、精度自体に課題が生じるとされています。県では来年度に、県民の生活習慣の状況や食生活・栄養摂取状況などを把握するため、5年に1度の調査である県民健康・栄養調査を実施する予定ですが、市町村の人口規模が小さいため、地域ごとの健康寿命の算出は困難です。
委員のお話にありましたように、中山間地にお住まいの方は健康的な生活をされていると思いますが、一方で医療や介護が必要になった場合は残念ながら中山間地を離れてしまう場合も多くあります。在宅での療養が選択できる環境を整備することで、住みなれた地域で安心して暮らし続けられる高知県を目指して、引き続き健康長寿県づくりに取り組んでまいりたいと考えております。
○依光委員
ありがとうございます。難しいということですが、在宅での介護の話を進めていただくということは非常に大事だと思っています。私も集落の方にお聞きをしたら、町の病院に行ってしまって痴呆が進んでしまったというような話も聞いて、やっぱり都会の住みなれんところで全て看護師さんにやっていただくような環境になると、かえって体によくないんじゃないかと思うこともあります。
一方で、在宅での介護ができるんであれば、地域とのコミュニケーションもとれますし、日常の会話もふえれば当然認知症ということも防げるんではないかと思うんで、そこでやっぱり高知県独自でできんかなというのは自分の夢のような話かもしれません。田舎者というとばかにするような言葉だと思うんですが、そして田舎に帰るというと夢破れて帰るみたいなことがあるんだと思うんですけれど、田舎に帰って健康になるとか、健康のために帰るみたいなことができればもっともっと違うような情報発信になるんかなと思いますんで、田舎に帰るというのが本当にうらやましいね、寿命が延びそうですねみたいなことになればもっともっと違う話になるんかなと思います。
(7)健康増進アプリの開発について
次に行きたいと思います。
高知県は来年度から高知家健康パスポート事業をスタートさせます。私はこの取り組みには非常に期待をしておりまして、高知県が数字の上でも日本一の健康長寿県となる大きな切り札になると考えております。私は、この取り組みについては、パスポートを持った方々が自分の健康状態について自分で管理できるような仕組みづくりまで持っていかなくてはと考えるところです。
他県の事例では健康パスポートの普及率が低い事例もお聞きしますが、健康というのは空気のようなもので、ふだんは気にとめず、病気になって初めて意識するというのが普通です。協力店舗の割引サービスで金銭的なメリットが受けられることは一定魅力的ではありますが、高い入会金、年会費を払ってのスポーツクラブであっても、ほぼ利用せずに無駄にしてしまうということを考えると、金銭的メリットには限界があると感じます。
シューズメーカーにナイキという会社がありますが、このナイキが「NIKE+ TRAINING CLUB」という取り組みを行っています。この取り組みはシューズメーカーの会社でありながらスポーツなどで体を動かすことの楽しさをお客さんに提供するという企業理念に基づいており、健康増進のアプリも提供しています。具体的には、スマートフォンにアプリをダウンロードし、自分で目標を設定してトレーニングをして記録に残すというもので、健康を維持する仕組みとしてはとてもすぐれたものであると感じます。例えば高知県は、情報産業による産業振興についても力を入れていますが、高知県の情報産業企業と連携して健康づくりへのモチベーションを高めていくような仕組みづくりができないかと考えるところです。
香美市物部町神池地区では、高知工科大学の大学生が集落の高齢者にタブレットを無償配付し、情報化技術を使った健康づくりについての取り組みをスタートさせました。
個人的なアイデアとしては、新鮮な野菜をつくる農作業の運動量をタブレットに入力したり、旬の野菜による料理を撮影して登録したりと、中山間地域で生き生きと生活する高齢者の姿を工科大生により分析していただき、中山間地域での生活が健康によいというようなデータがとれないかと考えるところです。農作業や山での狩猟、川での魚釣りなど、高知の高齢者らしい運動習慣も入力できれば話題性もあるのではと思います。
そこで、健康パスポート事業とも連携した高知県独自の健康増進アプリ開発について健康政策部長にお聞きをいたします。
○山本健康政策部長
健康パスポート事業の仕組みづくりの中で、アプリによる健康管理、特に若い方に気軽に活用していただくためのツールという観点から開発を検討した経緯はありますが、一定の経費や時間を要する上、メンテナンス上の課題などもあるため、まずは健康パスポートの普及に注力することにいたしました。
将来的には、健康パスポートの活用状況などを踏まえて、アプリによるポイントの付与やパスポート自体の電子化なども含めて検討したいと考えています。
○依光委員
ありがとうございます。このことなんですけれども、アプリ開発というのは高知県の情報化産業の中でも取り組みを進めていますんで、高知県が情報産業に取り組む中の一つのアプリ開発――今コンテンツ産業のアプリ開発というのが盛んなんですけれども、やっぱり高知でシェアオフィスとかやられている企業さんとかもあって、そういう企業さんと連携して高知発の高知独自のアプリができたら、高知の健康づくりはおもしろいということで、またそれがいい意味で高知県の日本一の健康長寿県の一つの目玉にもなるのかなと思って提案させてもらったんですが、ビジネスコンテストとか、これから商工労働部のほう、産業振興推進部のほうとかもいろいろやっていくんだと思いますんで、ぜひともそういうところも検討していただければと思います。
自分が思うのは、実用的な体力というのは中山間のお年寄りの方って非常にお持ちかなと思いますし、ふだん弱々しく見える方も、例えば狩猟現場とか猟友会の皆さんの現場を見せてもらったら、物すごい量の山歩きをされて、まさに実用的な体力やなと。だから、スポーツクラブでベンチプレスとかバーベルを上げるという体力とは違うものが何か測定できればおもしろいんじゃないかなと思いますんで、また検討していただければと思います。
(8)健康パスポート事業の仕組みづくりについて
次に、健康パスポート事業には県内各地の住民が参加し、県民運動になることが期待されます。しかし、健康ポイントがスポーツ施設など都市部に住む人々だけにしか使えないポイントばかりであれば、中山間地域の人にとっては余り魅力的に映らないのではと感じます。
健康パスポート事業の大きな目的は、健康診断の受診率向上もありますが、中山間地域に住む方々は家から病院や診療所までの交通手段について御苦労を感じていらっしゃいます。そこで、中山間地域においては健康づくりイベントへの参加などに加え、中山間地域での農作業なども地区長さんなどの協力を得ながら、ポイントを付与する仕組みがつくれないかと思います。
さらに、そのポイントが病院へ行くためだけに使える交通費割引券と交換できれば、農作業をしながらポイントを獲得するパスポート利用、交通費補助を使っての検診率向上と一石二鳥になるのではと思います。
そこで、スポーツ施設など健康づくり施設が少ない地域において、農作業などもポイントが付与できるような仕組みづくり、交通費割引券などと交換できる仕組みづくりができないか、健康政策部長にお聞きをいたします。
○山本健康政策部長
健康パスポート事業が目指す県民の健康意識の向上と行動の定着化のためには、県民の皆様に日々の生活の中で気軽で継続的に健康づくりに取り組んでいただくことが重要です。昨年の医療制度改革において、医療費の適正化に向けた予防、健康づくりへの取り組みが保険者の努力義務として位置づけられ、市町村はインセンティブ事業を初め健康の保持増進に資する取り組みが求められています。
市町村には、健康パスポートをプラットホームとして地域の実情に応じた健康づくりの取り組みを展開していただきたいと考えており、農作業などを通じたポイントの交付などの仕組みや病院に行くために使える交通費割引券などへの交換については、市町村の独自事業として検討していただけるのではないかと思います。
○依光委員
この健康パスポートですけれど、やはり高知県全体でできんと意味がないんだと思いますし、そういう意味で言ったら、高知市の方が使いやすくて、中山間の方が使いにくいというのはやっぱり残念だなと思います。
そういう意味において、さっきの健康づくりの調査とも関連しますけれども、やっぱり中山間の暮らしって健康的なんじゃないかというところが何か見えるような形になってもおもしろいかなと思うし、実際ルーツが田舎にあって高知市に住まれている方もおるんだと思うんですが、スポーツクラブへ行くよりは農作業で体を動かしたほうがいいんじゃないかとか、何か使える形にしていただきたいと思いますし、ここはやっぱり市町村をどう口説き落とすかという部長の力を見せていただければとも思いますが、医療費の削減って本当に国の大きな問題だと思いますし、この削減のためには投資もして、そのことによって全体として医療費が削減になればいいんだと思いますんで、そういう意味では産業育成をしたりであるとか、いろんな工夫ができるんじゃないかと思います。ぜひともよろしくお願いいたします。
(9)地域にとって重要な病院に対する支援 について
次に、中山間地域に関連した質問の最後に、病院の存続についての考え方についてお聞きをいたします。
地域にとって病院の重要性は言うまでもないことですが、国は昨年6月15日に、2025年時点の病院病床数を115万から119万床と現在よりも16万から20万床減らす目標を示しました。国は、この目標達成のために数字の上で病床数に余裕が見える高知県に対して、病床数削減に向けた圧力を強めてくるのではと危惧するところです。高知県議会においても、県民にかかわりの深い療養病床の機能分化については、県民の生活を守る視点でしっかり議論して取り組んでほしいと要請させていただいているところです。
そんな中、香美市の香長中央病院について、昨年8月に病院廃止の危機に陥っているという情報提供がありました。病院を経営する経営者の間で訴訟が起こり、昨年7月に最高裁で受理しないという決定がおりて、これから行われる差し戻し審の結果待ちであるという内容です。
裁判所の判断によって、経営母体である医療法人の社員がいなくなるという状況になることが想定されており、今後、法人の解散による病院の廃止のおそれがあります。裁判の経緯について詳細は語りませんが、多くの患者さんが療養病床に入院していることも勘案して、病院の廃止だけは避けるために力を尽くしていただきたいと考えております。
言うまでもありませんが、香美市の中山間地域で生活する方々にとって、とても重要な施設である香長中央病院の存続に向けての支援策について健康政策部長にお聞きをいたします。
○山本健康政策部長
お話のありました民事訴訟については、最高裁判所で上告不受理の判断がなされ、現時点では控訴審である高松高等裁判所の判決により高知地方裁判所に差し戻された状態であると聞いています。係争中の案件に県が直接関与することはできないものと考えています。
裁判が確定し、医療法人の社員がいなくなったと認められる場合には、医療法人の解散事由を定める医療法の規定に該当することになります。医療法人が解散すると、当該病院の運営ができなくなることから、県としては入院患者や外来患者さんなどへの対応も含めて、地域が混乱することのないよう、地元の香美市や医師会などの関係者と協議しながら必要な対応をしていくことになりますが、地域医療に混乱を生じさせないという観点に立ち、訴訟の当事者双方が真摯に協議されることを期待しています。
○依光委員
ありがとうございます。この件に関しては、私自身がお聞きしてから半年が経過したということで、ある意味覚悟を持って質問をさせていただきました。ここで取り上げさせていただいたからには、私も責任感を持って努力したいということを思っておりますので、ぜひとも御協力をよろしくお願いいたします。
高知県の中山間の対策は、本当に日本に先駆けていることが多いんだと思いますし、高知県で課題を解決するということは本当に日本を救うんだと自分は思っていますし、そういう意味ではぜひとも私も努力しますし皆様方とともに何とか中山間を維持するために頑張っていきたいと思います。
2高知の伝統的技術の継承について
(1)土佐打ち刃物に関する支援について
次に、話題をかえて、伝統的な高知の技術を残すという視点でお聞きをいたします。まずは土佐打ち刃物です。土佐打ち刃物は、国が指定する伝統的工芸品として土佐和紙とともに高知県において指定され、その歴史は鎌倉時代後期までさかのぼることができ、日本刀と同じ高品質の刃物鋼を用い、切れ味、耐摩耗性、刃の粘りにすぐれ、山林用刃物を中心に、全国に販売されています。この土佐打ち刃物業界は、規模は小さいですが外貨を稼ぐ重要な産業で、全国的に見ても重要なポジションを担っていると感じます。
恥ずかしながら私も昨年知ったのですが、香美市土佐山田町の鍛冶屋さんが、20年ごとに行われる伊勢神宮の式年遷宮において重要な役割を担っております。御杣始祭という木を切り出す行事があるのですが、土佐打ち刃物のおのを使っていただいているのです。同じように、諏訪大社の御柱祭でも山田でつくられたおのが使われています。このことは、土佐打ち刃物が山林用刃物としては日本一である証明となっています。
しかし、ライフスタイルの変化で、包丁を使って料理をする機会が減ったりステンレス製のものにかわったり、また農林業でも最高級の打ち刃物ではなく、安い刃物がホームセンターなどを通じて販売されたりと、経営環境は厳しく、他の産業と同様に深刻な後継者問題に直面しています。
この土佐打ち刃物の技術を学ぼうと、香美市や刃物組合に毎年数件の問い合わせがあります。意欲ある方がおり、移住者を呼び込むという意味でも非常に有望なのですが、受け入れる鍛冶屋さんは、一人前に育てるには時間がかかり、ひとり立ちして生計を立てるというのは至難のわざだと受け入れにちゅうちょされており、鍛冶屋のお弟子さんはふえていません。
県は伝統的工芸品産業等後継者育成対策事業費補助金を導入し、後継者を受け入れた鍛冶屋さんに補助を行っていますが、現場のお話をお聞きしてみますと、師匠に当たる鍛冶屋さんが御自分の製品をつくる時間を削り、材料費などを自費で出したりと収入を減らす形で教えている状況で、もう少し踏み込んだ応援ができないかと考えるところです。
また、他県では越前打ち刃物を守るためにタケフナイフビレッジという、鍛冶屋さんが共同利用する工場と販売を併設した施設を整備した事例があります。
そこで、高知県は土佐打ち刃物に関する支援として、伝統的工芸品産業等後継者育成対策事業費補助金について来年度はどのような改善を行うのか、またタケフナイフビレッジのような施設を整備しようとする際には支援する考えはあるか、商工労働部長にお聞きをいたします。
○原田商工労働部長
伝統的産業の後継者育成対策の補助金につきましては、市町村や事業者の方々と協議を行う中で、来年度から指導者、師匠に当たる方への報酬、そして研修生の受け入れ準備のための経費への助成を拡充してまいりたいというふうに考えております。
また、お尋ねにありました共同利用する工場と販売を併設した施設の整備につきましては、整備を行う際の初期投資に加えましてその後の維持・管理も大きな課題になってくると思います。まずは関係者の皆様の意向をしっかりとお聞きしまして、施設整備支援の要請がある場合には、県としてどういった支援ができるのか、検討させていただきたいと思います。
○依光委員
来年度は3年目ということで、大分踏み込んだ支援策をつくっていただいたと本当にありがたく思っています。
先ほども言いましたけれど、やっぱり日本一の山林用刃物ということも証明されていて、いいものであることは間違いないんですが、なかなか販売がうまくいかない。やっぱり時代の流れもあるんだと思います。売れれば全て解決するというか、利益を上げて後継者もできるわけなんですけれども、なかなか売れる商品になっていかないというジレンマがあって、私自身が突破口と思っているのが、新しい職人さんが生まれることによって、そこで新しい血が入ったりであるとか新しい知恵が業界に入ってくることこそが次につながるんではないかなと思っていまして、非常に期待している取り組みです。
今、刃物の中で一番鯨ナイフというナイフが売れていて、それは山林用刃物ではなくて実は教育委員会によく使ってもらっているんです。それは小学生が鉛筆を削るときにちょうどいい形だということなんです。刃物というと危ないといって今まで遠ざけてきたんだと思うんですけれど、多少鉛筆を削りながら手を切ってしまう、指を切ってしまうことはあるんだと思うんです。けれど、刃物業界の方とお話ししているときに、人間と刃物の関係はずっと長かったんだけれど危ないといって遠ざけるんではなくて、教育のところでもそういうものを使うことによってある意味人の痛みであるとかそういうこともわかるんじゃないかというようなことで評価していただいて、そういう形で売れるというような状況もあります。
伝統技術というのは、どこでどうヒットするかというのはわからなくて、産業観光というところでも刃物というのはおもしろいかもしれないですし、あと刀剣女子というような何か刃物に興味のある女性もふえてきたというような、全く意味がわからないような世界なんですけれど、そういう可能性もあるんですよね。
何で高知の土佐山田で打ち刃物を学びたいかといったら、自由鍛造ということで、いろいろな刃物をつくれるという強みがあるんです。ただ、自分が悩ましいのはそれがなかなかヒット商品がつくれないということで、来年度はまたデザインであるとか販路とか、そういうアドバイザーの方等の支援も得ながらやっていきたいと思いますし、やっている若手の方とかも海外に出したりもしているんです。ですから、和紙が、紙産業が注目されますが、刃物も忘れずにということでよろしくお願いいたします。
(2)土佐あかうしを核とした産業クラスターについて
次に、土佐あかうしについてお聞きをいたします。
私は、土佐あかうしも土佐の先人が努力を重ねて生み出した他県に誇れる伝統技術の結集であると思っております。歴史をたどると、明治時代に九州より移入された韓牛系統の牛をルーツに持ち、シンメンタール種や熊本県産褐毛牛との交配など改良が行われ、昭和19年に褐毛和種として認定されました。最近では、黒毛和種に負けない人気を誇り、なかなかお目にかかれない幻の牛として土佐あかうしの需要は高まってきております。
香美市においては、秋の刃物祭りにおいて土佐あかうしのバーベキューが長年にわたり人気で、近年は土佐の豊穣祭との連携もあり、県内外から多くのお客さんを呼び込んでいます。
土佐あかうしの増頭対策としては、来年度予算で受精卵移植用乳用牛の貸付制度を全国に先駆けて導入するなど、県の積極的な取り組みで将来的には土佐あかうしを核とした産業クラスター化も期待されるところです。
そこで、高知県は土佐あかうしを核とした産業クラスター化についてどのように取り組んでいくのか、農業振興部長にお聞きをいたします。
○味元農業振興部長
お話のございました土佐あかうしを核とした地域産業クラスターでございますが、嶺北地域の地域アクションプランといたしまして株式会社れいほく未来、地元の3つの町、そしてJAが連携をして土佐あかうしの生産から加工、そしてレストランなどの関連産業を集積、拡大させるという計画でございます。
その核となります土佐あかうしは、飼育頭数が大きく実は減少いたしておりますことから、クラスター化を進めるためには何よりもまずその増頭対策ということを強化することがポイントだと考えております。
お話にもございましたが、平成26年度からは酪農家の乳牛にあかうしの受精卵を移植しまして肉用の土佐あかうしの増頭を図り、その分あかうしの母牛を温存すると、こういう形で土佐あかうしの増頭を進めてまいりました。
来年度からは、県が乳牛を購入いたしまして酪農家に貸し付けるということも行いまして、この取り組みをさらに加速化していくということにいたしております。
こうしたことによりまして、飼育頭数は本年度に底を打ちまして増加傾向に転じておりますけれども、対策の効果が大きく出始めます平成32年には現在より930頭ほど増加をいたしまして、約2,650頭――これは飼育頭数でございますが――に増加をする見込みでございますし、また市場に出ます枝肉の供給量も230頭ほど増加をして約590頭になるという見込みでございます。
この実現に向けて、まずは全力を挙げて取り組んでまいります。
その上で、こうした取り組みとあわせて加工品の開発あるいは販路拡大に向けた戦略の検討、あるいはそれに必要な加工施設の整備といったことも必要になってまいります。具体的な内容は、今後2年ほどかけて検討していくというふうな状況だとお聞きをいたしておりますので、実施主体の皆様方と十分議論をしながら、先ほど言われましたクラスターの実現に向けて県も一緒になって取り組んでいきたいと考えております。
○依光委員
本当に県の取り組みが成果にあらわれてきているということを言っていただいたんだと思います。
(3)高知県広域食肉センターについて
私は、今後増頭が進めば大都市圏を中心とした外商の強化が必要となり、より高度な衛生管理による食肉処理が求められると思います。しかし、現在土佐あかうしが食肉処理されている、高知市にある高知県広域食肉センターは施設の老朽化が著しく、施設の改修や高度化が必要であると感じています。
そこで、高知県広域食肉センターについて土佐あかうしを振興していく上でどのようにお考えなのか、農業振興部長にお聞きをいたします。
○味元農業振興部長
お話のございました広域食肉センターは、土佐あかうしの振興はもとより畜産業にとって大変重要な施設でございますけれども、大変老朽化が進んでいるという実態にございます。
この2月からは、そこを支えております関係の市町村で構成をいたします広域食肉センターあり方検討委員会が立ち上がりまして、今後のあり方について検討が始まったところでございます。県もオブザーバーとして参加をしてほしいと、こういう御要請をいただきましたので副部長が参加をいたしまして議論をともにさせていただいているところでございます。
県は、今後検討会の結果を踏まえまして、支援なども含めて適切に対応していきたいと考えております。
○依光委員
先ほどおっしゃられたとおり、市町村が現在は運営、分担金を支払って運営している組織だと思います。今、あり方検討委員会というところで議論がされていると思うんですが、私自身が思うのは、市町村が広域で集まって今の高知県広域食肉センターを運営しているわけなんですが、やはり温度差が出てきているんじゃないかなと。嶺北のほうはどんどん牛がふえている状況はあるんだと思いますが、市町村によっては牛がいない市町村、そこは分担金を払うとなるとやっぱりなかなかまとまっていかんのじゃないか。そういう意味でいったら、やはり食肉を加工するというところは絶対に高度化しないと。あかうしを高く売っていく、品質、価格、県外商品と戦うためには絶対必要だと思っています。
そんなときに、沖縄の沖縄県食肉センターというところは株式会社で運営していまして、JAでありますとか沖縄県、民間企業が出資をしてやっている組織です。
そういうことを考えますと、今のやり方よりは機動力とか海外に売っていくということも視野に入れたら、やはり高度な施設は必要であるし意思決定もそれなりにスムーズにできるほうがいいのではないかなと思います。あり方検討委員会というところで議論がされるんだと思いますが、ぜひともあかうしを伸ばして、中山間の本当にいい雇用の場、所得の場になると思いますんで、ぜひともよろしくお願いいたします。
(4)県産材を活用した住宅への補助制度について
最後に、伝統的な土佐建築技術についてお聞きをいたします。
これまでの県議会でも土佐の建築文化についてお話をさせていただき、技術継承に向けて高知県にも応援をいただいております。しかし、建築基準法という戦後復興時につくられた法律により、日本の伝統的な建築技術を持つ大工さんにとってはやはり難しい時代となっております。
例を挙げれば、大工さんが建てた誇りある古民家が、今の建築基準法で見れば耐震基準が満たされておらず、改修を求められるということが多くあります。そもそも戦後復興の建築基準法は粗悪な住宅を規制するという観点から、3.5寸角という細い柱で組み、接合部を金物で補強し、間柱や筋交いを入れ、構造材ごと壁で覆うという工法です。
一方、土佐の伝統技術に根差した建物は、4寸から5寸角というような太い柱材をがっちりと組み上げます。そもそも金属が貴重品の時代からある構法なのですから、補強材としての金物はなく筋交いもありません。高度な技術を持った職人が矛盾を感じながら耐震化のために金物を使うというのは残念です。
さて、高知県では、高知県の木の需要喚起を目指して、こうちの木の住まいづくり助成事業による政策を進めており、昨年度も県産材を活用した木造住宅への支援が年間384棟の実績を上げるなど、このこと自体は非常に喜ばしいことです。ただ、補助金の活用については、県内の事業者ではありますが工務店や設計士が取り組んでいる物件が多く、さきにお話ししました地元に根差した大工さんなどにはこうした助成事業の内容がしっかりと伝わらず、結果として活用できていないと感じています。
こうした大工さんによる補助金の活用がふえれば、地元の材を直接活用する機会も高まり、さらには地元の製材業の活性化にもつながることから、地域の木材で家を建て、地域でお金が回ることになると考えます。
そこで、県産材の活用とあわせて建築に関する土佐の伝統技術を継承することにもなり、さらには中山間の活性化にもつなげていく非常に大切なこととして、地元の大工さんにもよりこうちの木の住まいづくり助成事業を活用していただけるような取り組みが必要であると考えますが、林業振興・環境部長にお聞きをいたします。
○大野林業振興・環境部長
こうちの木の住まいづくり助成事業について、県ではこれまで説明会や県のホームページなどにより制度の紹介や関係書類の作成方法などについて周知を行ってまいりました。
しかし、地元で頑張っておられる大工さんの中には、木材の合法証明や現場写真の撮影など申請に関する書類作成について煩雑だと感じておられる方、また木材を天然乾燥したものは補助の対象にならないなどの誤解があるなど、制度の内容が十分に伝わっていないところも見受けられました。
今後は、市町村や建設労組のような関係団体と連携し、事業への理解を深めていただくための説明会や個別の相談を受ける機会を設けるなど、きめ細やかな対応を行い、より多くの大工さんがこの制度を活用できるよう取り組んでまいります。
○依光委員
ありがとうございました。
この制度を地元の大工さんも使えることが余り認識されていないということは自分も問題に感じていまして、昔の大工さんというのはやっぱり職人かたぎのところもあって、何か残念やなとすごく思っています。
ただ、木の価値を一番わかっている方は昔の伝統技術を持っている大工さんだと思っています。今、板材であるとか柱材の値段がなかなか上がってこんというところで、やっぱり需要がなかなか伸びないと、そういう意味で言うと、外材が多いからということなんでしょうけれど、外の細い柱で今の建築基準法の中でプレハブ住宅を建てると。気密性のある家がいいんだということで、日本建築というとやっぱり冬は寒いんです。ただ、夏は涼しいんですよね。だから、いいところ悪いところで言ったら、やっぱり日本の伝統的なところが日本人の健康にもいいんだと思いますし、最近の話題で言ったら、梼原のゆすはら座を見た隈研吾さんがあそこでインスピレーションを得て、今度の新国立競技場までつくるに至るということはやっぱり木そのものの素材の力、大工さんの力だと思うんです。やっぱりそういうところを高知県もしっかり大事にしていただきたいし、そうすることが地域にお金が回ってくることになるんだと思います。しっかり私も宣伝もしていきますんで一緒になってやっていただきたいと思います。
用意しておりました質問の全部のお答えをいただきましたので、私の一切の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○桑名委員長
以上をもって、依光委員の質問は終わりました。
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○桑名委員長
以上をもちまして、本委員会の質疑並びに一般質問を終了いたします。
委員並びに執行部、報道関係各位におかれましては、長時間にわたりまことに御苦労さまでございました。
予算委員会は、平成8年2月定例会から始まってちょうど20年を迎え、この間提出された予算案などについてさまざまな視点から一問一答方式による質問を行い、議会の活性化に貢献してきたところでございます。一問一答方式による質問につきましては、来年度から本会議に場を移しましてさらなる議会の活性化を図ることとなり、今回が最後の予算委員会となりました。20年間にわたり関係者の皆様には大変お世話になり、ありがとうございました。また、今年度をもって退職される方々には、今後ますますの御活躍を御期待申し上げるところでございます。これをもちまして、平成28年2月定例会の予算委員会を閉会いたします。
午後4時46分閉会
○桑名委員長
休憩前に引き続き会議を開きます。一問一答による質疑並びに一般質問を続行いたします。依光委員の持ち時間は60分です。御協力をよろしくお願いをいたします。
○依光委員
予算委員会2日目、最後の質問の機会をいただきました。私にとっては、待ちくたびれたではなくて待ちわびた質問機会でございます。60分間よろしくお願いいたします。
1中山間対策について
(1)小さな集落を守るための施策について
私はこれまで、高知県の活性化について地域地域の集落を単位とした議論をさせていただいております。高知県の歴史ある集落を守っていくことが多様性ある土佐文化を守ることにつながり、土佐人としてのアイデンティティー、誇りにもつながると信じているからです。
平成25年9月定例会で、高知県が過去に行った集落調査についてホームページに公表してはどうかと質問させていただき、すぐに対応していただきました。検索サイトで高知県と集落調査の2つのキーワードを入れていただければ、中山間地域対策課の、過去の集落調査についてというページで国勢調査の結果をもとにした集落別の人口推移を昭和35年から平成12年まで見ることができます。
ちなみに、私の住む家は中村という集落区分に入ります。この中村は地図にはない地名で、回覧板とか氏神様をお祭りする単位として機能していて、生活する上で最も身近なコミュニティーの単位となっています。ちなみに、大字は楠目といい、中村のほかの小字としては、フラフ工場のある談議所、予岳寺のある予岳、ゴルフ場のある油石、伏原大塚古墳のある伏原、そして平田、前行の7つで構成され、明治初年には楠目村という単位でした。その後、明治22年の町村制の施行により大法寺村、植村と合併して大楠植村、そして土佐山田町、香美市へと合併して今に至ります。
1つ要請をさせていただきます。平成17年の県の集落調査は、中村の集落区分ではなく大楠植村の区分で人口があらわされ、平成23年度の平成22年分は、高知県集落の実態調査に重きが置かれたため個々の集落人口の記述はなく、少し残念に思います。平成27年の国勢調査に基づいた集落調査も来年度行うと思いますが、その際にはできるだけ詳細に、かつ過去のデータとの連続性が保てるようつくっていただきたいと要請させていただきます。
さて、私がこだわる昭和35年時の集落区分ですが、過去の高知県政において、農業センサスの調査区をもとに市町村の実情に応じて独自に整理した区分であるとお聞きしています。私は、この集落区分を使って、国の地方創生の議論や尾﨑県政のあらゆる課題解決についての新たな視点が生み出せるのではと考えています。簡潔に述べれば、高知県のあらゆる課題を文化的・歴史的背景を持つ小さな集落コミュニティーで解決していこうということになります。このコミュニティーは、自分の集落は自分で守るという自主自立の合意形成を最も醸成しやすい単位としても評価しています。
まず最初に、人口減少が進む日本の中のさらに人口面で厳しい高知県の集落において、地域地域の小さな集落を守るためにどのような施策を展開しようと考えているのか、中山間対策・運輸担当理事にお聞きをいたします。
○金谷中山間対策・運輸担当理事
本県の中山間対策、これは総合対策といたしまして3層の取り組みで進めております。成長戦略とアクションプランの取り組みが届きにくい地域地域の小さな集落対策には、3層目の対策に当たります集落活動センターの取り組みを進めております。この取り組みによりまして、しっかりと集落機能の維持・再生を図ってまいりたいと考えております。
また、そうした取り組みが届かない地域につきましては、必要とするところには生活用水の確保のための環境整備など、住み続けていく上で必要な生活支援の取り組みがしっかりと行き届くように取り組んでまいりたいと考えております。
○依光委員
ありがとうございました。
(2)集落活動センターの立ち上げについて
まずは、わかりやすい中山間対策から議論を深めていきたいと思います。
高知県は、中山間対策の最後の切り札として県内130カ所を目標に集落活動センターの導入を進めています。来年度の予算でも、開設をスピードアップすべくパンフレットの作成やフォーラムの開催、また開設した集落活動センターの情報交換を目指して連絡協議会も立ち上げるとしています。
私は、高知県の集落を守っていくことは待ったなしであると感じておりまして、手を挙げた地域を県が応援していくことに加え、県が集落活動センターをつくるべき地域について戦略的に働きかけていくことも重要ではないかと考えるところです。
香美市を例に集落活動センターをつくるべき場所を選定するとすれば、それは消防団の分団のある集落であると思います。香美市には、現在、旧土佐山田町に9つ、旧香北町に6つ、旧物部村に4つの消防団があります。その中で、旧土佐山田町だけは人口規模が特に小さい3つの分団で考え、香美市内で最終的に13カ所を目指します。ちなみに、旧土佐山田町は、佐岡、新改、繁藤の3カ所、旧香北町は美良布、暁霞、日ノ御子、永野、猪野々、西川の6カ所、旧物部村は大栃、岡ノ内、神池、五王堂の4カ所となります。過去には、これらの集落にはそれぞれ小学校があったのですが、現在では物部町大栃に大栃小学校、香北町美良布に大宮小学校と旧物部村と旧香北町には小学校が1つずつ、中学校が1つずつとなっております。また、土佐山田町の佐岡小学校と繁藤小中学校はそれぞれ平成25年に休校となりました。
消防団の分団のある集落は、自分の地域は自分で守るという意識を持った住民が多くいらっしゃって、過去には小学校もあったという背景から近隣の集落に比べ人口が多い拠点集落です。
こういった集落の人々は責任感が強く、先の見通しや経営についての完璧さを求めるがゆえに、集落活動センター設置に十分な地域の力があっても設置に向けて手を挙げないということも感じます。
集落活動センターの立ち上げについて、小学校区または中学校区単位の集落構成で考えていると思いますが、消防団の分団も小学校区単位の集落で構成されていることが多く、また分団の屯所のあるところはその集落の中心地となっています。
そこで、県として集落活動センターの立ち上げについて消防団の分団のある集落を重点集落と設定し、戦略的に働きかけるお考えはないか、中山間対策・運輸担当理事にお聞きをいたします。
○金谷中山間対策・運輸担当理事
集落活動センターの活動の範囲をどう選択するかは、地域や市町村の考えによることを基本としており、あらかじめ設定した要件で進めていくという方法が地域で受け入れられるのかという懸念もございますが、消防団の分団がある集落などはセンターの候補地として有望と思われますので、候補地の検討の際にはそうした視点も意識しながら市町村とも協議をしてまいりたいと考えております。
○依光委員
ありがとうございます。
当然、市町村が考えていかんとということはよくわかります。香美市において自分がすごく感じるのは、先日の土曜日に香美市の合併10周年ということでセレモニーがあったんですが、私が言われることに、合併効果って本当にあったのかという話をよく聞きます。そういう意味では、今の旧物部村においては大栃小学校、大栃中学校、旧香北町においては大宮小学校と香北中学校、ここを残すためにもう自分は待ったなしだと思っていまして、手を挙げることを待つという時間的余裕が本当にあるのかなというふうにも思うんです。
ですから、市町村との連携を地域本部も頑張っていただいておりますんで、また私もやっぱり力を入れて住民の方とも議論させていただきたいと思いますが、この辺は戦略的にということも、また検討をぜひしていただきたいと思います。
(3)T型集落点検について
次に、T型集落点検の導入支援についてお聞きをいたします。
高知県の中山間地域に住む多くの人々は、高度経済成長期に地元小学校を統廃合により失い、農協の合併により地元出荷場を失い、また市町村合併により役場機能まで大きな町に奪われていきました。そんな中、中山間地域の住民の皆さん方の中には、諦めの気持ちが先に立ち、集落の将来について、自分たちがいなくなったら集落が消滅するのも仕方がないと覚悟を決められている場合もあります。
今議会においても、県は尾﨑知事を先頭に集落を守るんだという意気込みを語られていましたが、私も集落の皆さん方に踏ん張っていただきたいし、希望を持てる何かを提供できないかと考えています。
そこで、私はT型集落点検を実施して、集落の持つ潜在的なマンパワーを見える化して、今は外で生活している地元出身者を集落の頼もしい助っ人にできるような環境をつくり出したいと思います。
このT型集落点検は熊本大学の徳野教授が提唱されている方法で、家系図を描いた際のお父さん、お母さん、子供という関係がT字型に見えることからつけられ、集落に何らかの縁がある地元出身者を全て書き出すというものです。集落の人口推計を見れば、10年後に人口半減などという数字が示され、暗い気持ちになることが多いのですが、このT型集落点検は集落の潜在的な応援団を明示でき、まだまだやれると前向きな取り組みを生み出せます。
県内で大学生が地域に入ってやっている事例もありますが、改めて手順をお話しします。1、模造紙に集落の地図と家を書く。2、家ごとの家族構成を家系図の形で書く。現在住んでいる人と集落外に出ている人を色分けする。3、空き家やかつて家があった場所でも同様の作業をする。4、世帯ごとに丸で囲み、他集落の世帯は住所も書く。5、他集落に住んでいる人と現在集落に住んでいる人とのきずなの深さを明示する。
集落を出た人に光を当て、集落の維持・活性化に協力してもらうというこのT型集落点検は非常に有効な手段と思いますが、県としてどう評価をしているか、また取り組みを広げるために市町村や大学に働きかけるとともに、大学生などが地域へ入っていく活動のバックアップができないか、中山間対策・運輸担当理事にお聞きをいたします。
○金谷中山間対策・運輸担当理事
お話のございましたT型集落点検は、小字単位の集落で行う地域力を再確認するための話し合いの手法として有効であるとお聞きをしております。センターの仕組みを住民の方に説明する際などにT型集落点検による手法を紹介したこともあり、今後も研修や協議の場で紹介をしてまいりたいと考えております。
○依光委員
ありがとうございます。T型集落点検というのは、今自分が県政とか県議会の中で余り聞くことがなくて現場では結構使われているんだと思うんですが、またそこら辺は情報共有をしていただければと思います。
やっぱり、集落の人口は減っていくんですけれども、集落によっては例えば大きなお祭りのときに住民みんなが集まるとか、あとは平山地区とかで運動会をやったりとかして、そういうときに昔いた人が集まると、そういう人たちが休みの日とかに集落に入って田んぼを手伝うとか、やっぱりそういうことはすごくいいことだと思いますし、そういうことをやることによって地元の方も元気になるし、ルーツを知るということはやっぱりいいことだと思いますんで、ぜひとも進めていただきたいと思います。
(4)中山間地域での都市部からの避難者の受け入れについて
次に、南海トラフ地震対策と中山間地域の連携について質問させていただきます。南海トラフ地震発災後、高知市では長期浸水が言われており、発災1週間後において県全体の避難所の収容能力がいまだに約4万人不足するなど、長期の避難生活が予想されているところです。
そこで、これまで沿岸部と津波の被害のない中山間地域の交流を日ごろから行うことにより、いざというときには顔見知りが多い中山間地域で避難生活を送るという仕組みが議論されてきました。また、津波で家が流された被災者のために仮設住宅をつくる必要がありますが、中山間地域の使われていない空き家を行政が借り上げて改修し、いざというときに備えるという空き家活用促進事業も県内各市町村に広がっています。
一方で、沿岸部と中山間地域の交流をも目的としていた平成26年度の結による支え合い推進事業は、27年度には集落の維持・活性化については大学などによる地域との協働体制が確立されてきたためということで、集落活動センターや高知ふるさと応援隊の活動に集約され、廃止されました。
私は、いざというときには中山間地域の集落が都市部の住民を受け入れる体制づくりというのは非常に重要な視点で、できれば数値目標も盛り込んだ形で受け入れ可能人数のボリュームをふやしていくような仕組みづくりが必要ではないかと考えるところです。この交流拠点については、先ほど話をした消防団のある集落に防災拠点機能を持たせて集落活動センターとして機能強化できれば、かねてからの沿岸部と中山間地域の交流を推進することも可能となります。
現在、他市町村からの避難者数や受け入れ施設の収容能力を集計し、広域避難の検討を進めていますが、消防団の分団が置かれている集落における市町村が指定する避難所について、都市部からの避難者を周辺地域に加えて中山間地域で受け入れることも考えられると思いますが、危機管理部長にお聞きをいたします。
○野々村危機管理部長
広域避難につきましては、現在、県内を安芸、中央、高幡、幡多の4つの圏域に分けて検討を進めておるところでございます。
これらの圏域ごとにそれぞれの市町村において地域ごとで避難所における収容人数の過不足を調整するとともに、利用可能となる施設の洗い出しを行い、これらの耐震化や学校の教室利用など避難所の確保対策を促進してきているところでございます。
広域避難につきましては、できるだけお住まいの近くの市町村の避難所に避難していただくことが望ましいと思っておりますが、最大クラスの地震を想定した場合、現時点では発災1週間後で約4万人分が不足しておりまして、県内の全避難所のうち受け入れに余裕のあるものは全て活用しなければならないという状況であります。お話のありました、中山間地域にあった小学校などで地震対策に対する避難所としての条件を備えている施設については、受け入れの余裕がある場合は広域での避難所としてぜひ活用していただきたいというふうに思っております。
(5)受け入れ側の避難所への支援策について
○依光委員
続けて、受け入れ側の避難所において資機材整備や環境整備が必要と考えますが、その支援策はあるか、危機管理部長にお聞きをいたします。
○野々村危機管理部長
避難所への資機材や環境の整備は、簡易トイレなどの資機材や倉庫、防災井戸などの整備を補助の対象として、平成26年度から支援してきたところでございます。来年度からは、新たに避難所の開設方法や運営体制を定めた避難所運営マニュアルを作成したものに対して、補助率をかさ上げして運営に必要な資機材や環境整備を支援する予定でございます。
○依光委員
ありがとうございます。前向きな御答弁やったと思いますが、私がここで考えていただきたいのが、昔からあった集落というのは、そもそもそこに水と食料とエネルギーがあったから集落があったんだと思います。当然、水があるんで田んぼをして、そして食料を生産してエネルギーはまきとかそういうものがあるんで、高知県でも災害が多くて孤立集落になって助けに行かんといかんといって、行ったらおじいさんおばあさんは全然平気な顔をしていたというような話も聞くんですが、やっぱり先人の生きる知恵というか、電気がとまっても全然平気というような集落があったりもします。そこで思うのが、資機材整備というところも、例えばトイレをたくさんつくっておいて、集落活動センターになれば日常は大学生が行ったりして交流して、いざとなったら避難すると。
簡易トイレという話もありましたけれども、できるならば固定のトイレをつくっていただき、集落活動センターの試みと中山間対策の試みを一緒に整備できれば、かなり形になるんではないかなと思いますんで、また部局を超えて検討していただければと思います。
(6)中山間地域の健康寿命の実態調査について
次に、中山間集落と日本一の健康長寿県構想に関連してお聞きをいたします。
高知県は、県民の誰もが住みなれた地域で安心して暮らし続けられるためにということで、中山間地域での福祉サービスにも力を入れています。私は、このことに対して非常に頼もしく思っております。
高知県の中山間地域には70代、80代の方々も多くいらっしゃって、例えば家族とともにユズをつくって今でも働いているという方もいらっしゃいます。国の地方創生の議論の中で、都市だけに人口を集めるコンパクトシティー推進論や都市部での人口のダム論という話がありますが、不便な土地から便利な都市に人を移せというような議論は大きなお世話だと怒りを覚えます。交通の便が悪いところに住む人への医療・介護支援は非効率という暴論です。しかし、そもそも不便と言われているところに住んでいる方々は、身も心も健康な方が多く、医療費をたくさん使っているとは思えません。日常の生活の中で畑仕事などにより体を動かし、新鮮な野菜を中心とした豊かな食生活なのですから、一生涯を通じた医療費で見れば都会で一生を送る方よりもトータルで安いのではと思います。
私の仮説ですが、都会で一生涯過ごす方と中山間地域で一生涯過ごす方のトータルでの医療費を比べた場合には、中山間地域の方のほうが医療費が安いのではと考えます。現在、健康寿命ということが言われていますが、都会から中山間地域での生活に移ることで健康寿命を延ばすというようなことが証明できれば、都会から中山間地域への人の流れもつくれるのではと考えます。
先ほどT型集落点検の話をさせていただきましたが、集落にルーツのある方々に積極的に帰っていただくために、引退後は生まれ育った集落に帰ることが健康寿命を延ばすことになりますよというメッセージを送れないかと考えるところです。
中山間地域で生活する方々の健康状況を調べた調査としては、こうち健康・省エネ住宅推進協議会という組織が中山間地域に住む方の健康状態を調べています。寒暖の差が激しい中山間地域において、気密性が低い日本建築は冬は寒く暖房代が高くつく。また、暖かい部屋から寒い風呂場で服を脱ぐことは血圧の変動が激しくなり命の危険さえあるという、いわゆるヒートショックの危険性を主張しました。つまり、中山間地域の伝統的な日本建築に住むお年寄りは寿命が短いというような結論です。この結論は、伝統的な日本建築ではなく、気密性が高くて暖房代が節約できるプレハブ住宅や都市部のマンションに住むことが健康寿命を延ばせるという偏った情報提供です。個人的には、気密性が高く金属屋根で熱の影響を受けやすい現在主流の住宅は、夏場の熱中症やシックハウスなどでかえって寿命を短くすることになるのではと感じます。
人の健康を構成する要素には、食事、運動、睡眠時間などに加えストレスや住環境などあらゆる要素が絡みますので、非常に難しいことは承知しておりますが、都市での生活のほうが健康寿命を延ばせるという主張が強く思える風潮に、高知県が独自の根拠で反論することには意義があるのではと考えるところです。
そこで、高知県の中山間地域で自家消費の野菜を生産しながら生活している65歳以上の方々を対象とした健康調査を行い、中山間地域での集落に住む方々の健康寿命が都会の住民に負けない生活が送れるという証明ができるようなことが考えられないか、健康政策部長にお聞きをいたします。
○山本健康政策部長
国の健康寿命の算出方法の指針では、健康寿命の算出には調査地域の人口は13万人以上が望ましいとされており、人口規模がそれに満たない場合、健康寿命が極端に長くなったり短くなったりする可能性が高くなり、精度自体に課題が生じるとされています。県では来年度に、県民の生活習慣の状況や食生活・栄養摂取状況などを把握するため、5年に1度の調査である県民健康・栄養調査を実施する予定ですが、市町村の人口規模が小さいため、地域ごとの健康寿命の算出は困難です。
委員のお話にありましたように、中山間地にお住まいの方は健康的な生活をされていると思いますが、一方で医療や介護が必要になった場合は残念ながら中山間地を離れてしまう場合も多くあります。在宅での療養が選択できる環境を整備することで、住みなれた地域で安心して暮らし続けられる高知県を目指して、引き続き健康長寿県づくりに取り組んでまいりたいと考えております。
○依光委員
ありがとうございます。難しいということですが、在宅での介護の話を進めていただくということは非常に大事だと思っています。私も集落の方にお聞きをしたら、町の病院に行ってしまって痴呆が進んでしまったというような話も聞いて、やっぱり都会の住みなれんところで全て看護師さんにやっていただくような環境になると、かえって体によくないんじゃないかと思うこともあります。
一方で、在宅での介護ができるんであれば、地域とのコミュニケーションもとれますし、日常の会話もふえれば当然認知症ということも防げるんではないかと思うんで、そこでやっぱり高知県独自でできんかなというのは自分の夢のような話かもしれません。田舎者というとばかにするような言葉だと思うんですが、そして田舎に帰るというと夢破れて帰るみたいなことがあるんだと思うんですけれど、田舎に帰って健康になるとか、健康のために帰るみたいなことができればもっともっと違うような情報発信になるんかなと思いますんで、田舎に帰るというのが本当にうらやましいね、寿命が延びそうですねみたいなことになればもっともっと違う話になるんかなと思います。
(7)健康増進アプリの開発について
次に行きたいと思います。
高知県は来年度から高知家健康パスポート事業をスタートさせます。私はこの取り組みには非常に期待をしておりまして、高知県が数字の上でも日本一の健康長寿県となる大きな切り札になると考えております。私は、この取り組みについては、パスポートを持った方々が自分の健康状態について自分で管理できるような仕組みづくりまで持っていかなくてはと考えるところです。
他県の事例では健康パスポートの普及率が低い事例もお聞きしますが、健康というのは空気のようなもので、ふだんは気にとめず、病気になって初めて意識するというのが普通です。協力店舗の割引サービスで金銭的なメリットが受けられることは一定魅力的ではありますが、高い入会金、年会費を払ってのスポーツクラブであっても、ほぼ利用せずに無駄にしてしまうということを考えると、金銭的メリットには限界があると感じます。
シューズメーカーにナイキという会社がありますが、このナイキが「NIKE+ TRAINING CLUB」という取り組みを行っています。この取り組みはシューズメーカーの会社でありながらスポーツなどで体を動かすことの楽しさをお客さんに提供するという企業理念に基づいており、健康増進のアプリも提供しています。具体的には、スマートフォンにアプリをダウンロードし、自分で目標を設定してトレーニングをして記録に残すというもので、健康を維持する仕組みとしてはとてもすぐれたものであると感じます。例えば高知県は、情報産業による産業振興についても力を入れていますが、高知県の情報産業企業と連携して健康づくりへのモチベーションを高めていくような仕組みづくりができないかと考えるところです。
香美市物部町神池地区では、高知工科大学の大学生が集落の高齢者にタブレットを無償配付し、情報化技術を使った健康づくりについての取り組みをスタートさせました。
個人的なアイデアとしては、新鮮な野菜をつくる農作業の運動量をタブレットに入力したり、旬の野菜による料理を撮影して登録したりと、中山間地域で生き生きと生活する高齢者の姿を工科大生により分析していただき、中山間地域での生活が健康によいというようなデータがとれないかと考えるところです。農作業や山での狩猟、川での魚釣りなど、高知の高齢者らしい運動習慣も入力できれば話題性もあるのではと思います。
そこで、健康パスポート事業とも連携した高知県独自の健康増進アプリ開発について健康政策部長にお聞きをいたします。
○山本健康政策部長
健康パスポート事業の仕組みづくりの中で、アプリによる健康管理、特に若い方に気軽に活用していただくためのツールという観点から開発を検討した経緯はありますが、一定の経費や時間を要する上、メンテナンス上の課題などもあるため、まずは健康パスポートの普及に注力することにいたしました。
将来的には、健康パスポートの活用状況などを踏まえて、アプリによるポイントの付与やパスポート自体の電子化なども含めて検討したいと考えています。
○依光委員
ありがとうございます。このことなんですけれども、アプリ開発というのは高知県の情報化産業の中でも取り組みを進めていますんで、高知県が情報産業に取り組む中の一つのアプリ開発――今コンテンツ産業のアプリ開発というのが盛んなんですけれども、やっぱり高知でシェアオフィスとかやられている企業さんとかもあって、そういう企業さんと連携して高知発の高知独自のアプリができたら、高知の健康づくりはおもしろいということで、またそれがいい意味で高知県の日本一の健康長寿県の一つの目玉にもなるのかなと思って提案させてもらったんですが、ビジネスコンテストとか、これから商工労働部のほう、産業振興推進部のほうとかもいろいろやっていくんだと思いますんで、ぜひともそういうところも検討していただければと思います。
自分が思うのは、実用的な体力というのは中山間のお年寄りの方って非常にお持ちかなと思いますし、ふだん弱々しく見える方も、例えば狩猟現場とか猟友会の皆さんの現場を見せてもらったら、物すごい量の山歩きをされて、まさに実用的な体力やなと。だから、スポーツクラブでベンチプレスとかバーベルを上げるという体力とは違うものが何か測定できればおもしろいんじゃないかなと思いますんで、また検討していただければと思います。
(8)健康パスポート事業の仕組みづくりについて
次に、健康パスポート事業には県内各地の住民が参加し、県民運動になることが期待されます。しかし、健康ポイントがスポーツ施設など都市部に住む人々だけにしか使えないポイントばかりであれば、中山間地域の人にとっては余り魅力的に映らないのではと感じます。
健康パスポート事業の大きな目的は、健康診断の受診率向上もありますが、中山間地域に住む方々は家から病院や診療所までの交通手段について御苦労を感じていらっしゃいます。そこで、中山間地域においては健康づくりイベントへの参加などに加え、中山間地域での農作業なども地区長さんなどの協力を得ながら、ポイントを付与する仕組みがつくれないかと思います。
さらに、そのポイントが病院へ行くためだけに使える交通費割引券と交換できれば、農作業をしながらポイントを獲得するパスポート利用、交通費補助を使っての検診率向上と一石二鳥になるのではと思います。
そこで、スポーツ施設など健康づくり施設が少ない地域において、農作業などもポイントが付与できるような仕組みづくり、交通費割引券などと交換できる仕組みづくりができないか、健康政策部長にお聞きをいたします。
○山本健康政策部長
健康パスポート事業が目指す県民の健康意識の向上と行動の定着化のためには、県民の皆様に日々の生活の中で気軽で継続的に健康づくりに取り組んでいただくことが重要です。昨年の医療制度改革において、医療費の適正化に向けた予防、健康づくりへの取り組みが保険者の努力義務として位置づけられ、市町村はインセンティブ事業を初め健康の保持増進に資する取り組みが求められています。
市町村には、健康パスポートをプラットホームとして地域の実情に応じた健康づくりの取り組みを展開していただきたいと考えており、農作業などを通じたポイントの交付などの仕組みや病院に行くために使える交通費割引券などへの交換については、市町村の独自事業として検討していただけるのではないかと思います。
○依光委員
この健康パスポートですけれど、やはり高知県全体でできんと意味がないんだと思いますし、そういう意味で言ったら、高知市の方が使いやすくて、中山間の方が使いにくいというのはやっぱり残念だなと思います。
そういう意味において、さっきの健康づくりの調査とも関連しますけれども、やっぱり中山間の暮らしって健康的なんじゃないかというところが何か見えるような形になってもおもしろいかなと思うし、実際ルーツが田舎にあって高知市に住まれている方もおるんだと思うんですが、スポーツクラブへ行くよりは農作業で体を動かしたほうがいいんじゃないかとか、何か使える形にしていただきたいと思いますし、ここはやっぱり市町村をどう口説き落とすかという部長の力を見せていただければとも思いますが、医療費の削減って本当に国の大きな問題だと思いますし、この削減のためには投資もして、そのことによって全体として医療費が削減になればいいんだと思いますんで、そういう意味では産業育成をしたりであるとか、いろんな工夫ができるんじゃないかと思います。ぜひともよろしくお願いいたします。
(9)地域にとって重要な病院に対する支援 について
次に、中山間地域に関連した質問の最後に、病院の存続についての考え方についてお聞きをいたします。
地域にとって病院の重要性は言うまでもないことですが、国は昨年6月15日に、2025年時点の病院病床数を115万から119万床と現在よりも16万から20万床減らす目標を示しました。国は、この目標達成のために数字の上で病床数に余裕が見える高知県に対して、病床数削減に向けた圧力を強めてくるのではと危惧するところです。高知県議会においても、県民にかかわりの深い療養病床の機能分化については、県民の生活を守る視点でしっかり議論して取り組んでほしいと要請させていただいているところです。
そんな中、香美市の香長中央病院について、昨年8月に病院廃止の危機に陥っているという情報提供がありました。病院を経営する経営者の間で訴訟が起こり、昨年7月に最高裁で受理しないという決定がおりて、これから行われる差し戻し審の結果待ちであるという内容です。
裁判所の判断によって、経営母体である医療法人の社員がいなくなるという状況になることが想定されており、今後、法人の解散による病院の廃止のおそれがあります。裁判の経緯について詳細は語りませんが、多くの患者さんが療養病床に入院していることも勘案して、病院の廃止だけは避けるために力を尽くしていただきたいと考えております。
言うまでもありませんが、香美市の中山間地域で生活する方々にとって、とても重要な施設である香長中央病院の存続に向けての支援策について健康政策部長にお聞きをいたします。
○山本健康政策部長
お話のありました民事訴訟については、最高裁判所で上告不受理の判断がなされ、現時点では控訴審である高松高等裁判所の判決により高知地方裁判所に差し戻された状態であると聞いています。係争中の案件に県が直接関与することはできないものと考えています。
裁判が確定し、医療法人の社員がいなくなったと認められる場合には、医療法人の解散事由を定める医療法の規定に該当することになります。医療法人が解散すると、当該病院の運営ができなくなることから、県としては入院患者や外来患者さんなどへの対応も含めて、地域が混乱することのないよう、地元の香美市や医師会などの関係者と協議しながら必要な対応をしていくことになりますが、地域医療に混乱を生じさせないという観点に立ち、訴訟の当事者双方が真摯に協議されることを期待しています。
○依光委員
ありがとうございます。この件に関しては、私自身がお聞きしてから半年が経過したということで、ある意味覚悟を持って質問をさせていただきました。ここで取り上げさせていただいたからには、私も責任感を持って努力したいということを思っておりますので、ぜひとも御協力をよろしくお願いいたします。
高知県の中山間の対策は、本当に日本に先駆けていることが多いんだと思いますし、高知県で課題を解決するということは本当に日本を救うんだと自分は思っていますし、そういう意味ではぜひとも私も努力しますし皆様方とともに何とか中山間を維持するために頑張っていきたいと思います。
2高知の伝統的技術の継承について
(1)土佐打ち刃物に関する支援について
次に、話題をかえて、伝統的な高知の技術を残すという視点でお聞きをいたします。まずは土佐打ち刃物です。土佐打ち刃物は、国が指定する伝統的工芸品として土佐和紙とともに高知県において指定され、その歴史は鎌倉時代後期までさかのぼることができ、日本刀と同じ高品質の刃物鋼を用い、切れ味、耐摩耗性、刃の粘りにすぐれ、山林用刃物を中心に、全国に販売されています。この土佐打ち刃物業界は、規模は小さいですが外貨を稼ぐ重要な産業で、全国的に見ても重要なポジションを担っていると感じます。
恥ずかしながら私も昨年知ったのですが、香美市土佐山田町の鍛冶屋さんが、20年ごとに行われる伊勢神宮の式年遷宮において重要な役割を担っております。御杣始祭という木を切り出す行事があるのですが、土佐打ち刃物のおのを使っていただいているのです。同じように、諏訪大社の御柱祭でも山田でつくられたおのが使われています。このことは、土佐打ち刃物が山林用刃物としては日本一である証明となっています。
しかし、ライフスタイルの変化で、包丁を使って料理をする機会が減ったりステンレス製のものにかわったり、また農林業でも最高級の打ち刃物ではなく、安い刃物がホームセンターなどを通じて販売されたりと、経営環境は厳しく、他の産業と同様に深刻な後継者問題に直面しています。
この土佐打ち刃物の技術を学ぼうと、香美市や刃物組合に毎年数件の問い合わせがあります。意欲ある方がおり、移住者を呼び込むという意味でも非常に有望なのですが、受け入れる鍛冶屋さんは、一人前に育てるには時間がかかり、ひとり立ちして生計を立てるというのは至難のわざだと受け入れにちゅうちょされており、鍛冶屋のお弟子さんはふえていません。
県は伝統的工芸品産業等後継者育成対策事業費補助金を導入し、後継者を受け入れた鍛冶屋さんに補助を行っていますが、現場のお話をお聞きしてみますと、師匠に当たる鍛冶屋さんが御自分の製品をつくる時間を削り、材料費などを自費で出したりと収入を減らす形で教えている状況で、もう少し踏み込んだ応援ができないかと考えるところです。
また、他県では越前打ち刃物を守るためにタケフナイフビレッジという、鍛冶屋さんが共同利用する工場と販売を併設した施設を整備した事例があります。
そこで、高知県は土佐打ち刃物に関する支援として、伝統的工芸品産業等後継者育成対策事業費補助金について来年度はどのような改善を行うのか、またタケフナイフビレッジのような施設を整備しようとする際には支援する考えはあるか、商工労働部長にお聞きをいたします。
○原田商工労働部長
伝統的産業の後継者育成対策の補助金につきましては、市町村や事業者の方々と協議を行う中で、来年度から指導者、師匠に当たる方への報酬、そして研修生の受け入れ準備のための経費への助成を拡充してまいりたいというふうに考えております。
また、お尋ねにありました共同利用する工場と販売を併設した施設の整備につきましては、整備を行う際の初期投資に加えましてその後の維持・管理も大きな課題になってくると思います。まずは関係者の皆様の意向をしっかりとお聞きしまして、施設整備支援の要請がある場合には、県としてどういった支援ができるのか、検討させていただきたいと思います。
○依光委員
来年度は3年目ということで、大分踏み込んだ支援策をつくっていただいたと本当にありがたく思っています。
先ほども言いましたけれど、やっぱり日本一の山林用刃物ということも証明されていて、いいものであることは間違いないんですが、なかなか販売がうまくいかない。やっぱり時代の流れもあるんだと思います。売れれば全て解決するというか、利益を上げて後継者もできるわけなんですけれども、なかなか売れる商品になっていかないというジレンマがあって、私自身が突破口と思っているのが、新しい職人さんが生まれることによって、そこで新しい血が入ったりであるとか新しい知恵が業界に入ってくることこそが次につながるんではないかなと思っていまして、非常に期待している取り組みです。
今、刃物の中で一番鯨ナイフというナイフが売れていて、それは山林用刃物ではなくて実は教育委員会によく使ってもらっているんです。それは小学生が鉛筆を削るときにちょうどいい形だということなんです。刃物というと危ないといって今まで遠ざけてきたんだと思うんですけれど、多少鉛筆を削りながら手を切ってしまう、指を切ってしまうことはあるんだと思うんです。けれど、刃物業界の方とお話ししているときに、人間と刃物の関係はずっと長かったんだけれど危ないといって遠ざけるんではなくて、教育のところでもそういうものを使うことによってある意味人の痛みであるとかそういうこともわかるんじゃないかというようなことで評価していただいて、そういう形で売れるというような状況もあります。
伝統技術というのは、どこでどうヒットするかというのはわからなくて、産業観光というところでも刃物というのはおもしろいかもしれないですし、あと刀剣女子というような何か刃物に興味のある女性もふえてきたというような、全く意味がわからないような世界なんですけれど、そういう可能性もあるんですよね。
何で高知の土佐山田で打ち刃物を学びたいかといったら、自由鍛造ということで、いろいろな刃物をつくれるという強みがあるんです。ただ、自分が悩ましいのはそれがなかなかヒット商品がつくれないということで、来年度はまたデザインであるとか販路とか、そういうアドバイザーの方等の支援も得ながらやっていきたいと思いますし、やっている若手の方とかも海外に出したりもしているんです。ですから、和紙が、紙産業が注目されますが、刃物も忘れずにということでよろしくお願いいたします。
(2)土佐あかうしを核とした産業クラスターについて
次に、土佐あかうしについてお聞きをいたします。
私は、土佐あかうしも土佐の先人が努力を重ねて生み出した他県に誇れる伝統技術の結集であると思っております。歴史をたどると、明治時代に九州より移入された韓牛系統の牛をルーツに持ち、シンメンタール種や熊本県産褐毛牛との交配など改良が行われ、昭和19年に褐毛和種として認定されました。最近では、黒毛和種に負けない人気を誇り、なかなかお目にかかれない幻の牛として土佐あかうしの需要は高まってきております。
香美市においては、秋の刃物祭りにおいて土佐あかうしのバーベキューが長年にわたり人気で、近年は土佐の豊穣祭との連携もあり、県内外から多くのお客さんを呼び込んでいます。
土佐あかうしの増頭対策としては、来年度予算で受精卵移植用乳用牛の貸付制度を全国に先駆けて導入するなど、県の積極的な取り組みで将来的には土佐あかうしを核とした産業クラスター化も期待されるところです。
そこで、高知県は土佐あかうしを核とした産業クラスター化についてどのように取り組んでいくのか、農業振興部長にお聞きをいたします。
○味元農業振興部長
お話のございました土佐あかうしを核とした地域産業クラスターでございますが、嶺北地域の地域アクションプランといたしまして株式会社れいほく未来、地元の3つの町、そしてJAが連携をして土佐あかうしの生産から加工、そしてレストランなどの関連産業を集積、拡大させるという計画でございます。
その核となります土佐あかうしは、飼育頭数が大きく実は減少いたしておりますことから、クラスター化を進めるためには何よりもまずその増頭対策ということを強化することがポイントだと考えております。
お話にもございましたが、平成26年度からは酪農家の乳牛にあかうしの受精卵を移植しまして肉用の土佐あかうしの増頭を図り、その分あかうしの母牛を温存すると、こういう形で土佐あかうしの増頭を進めてまいりました。
来年度からは、県が乳牛を購入いたしまして酪農家に貸し付けるということも行いまして、この取り組みをさらに加速化していくということにいたしております。
こうしたことによりまして、飼育頭数は本年度に底を打ちまして増加傾向に転じておりますけれども、対策の効果が大きく出始めます平成32年には現在より930頭ほど増加をいたしまして、約2,650頭――これは飼育頭数でございますが――に増加をする見込みでございますし、また市場に出ます枝肉の供給量も230頭ほど増加をして約590頭になるという見込みでございます。
この実現に向けて、まずは全力を挙げて取り組んでまいります。
その上で、こうした取り組みとあわせて加工品の開発あるいは販路拡大に向けた戦略の検討、あるいはそれに必要な加工施設の整備といったことも必要になってまいります。具体的な内容は、今後2年ほどかけて検討していくというふうな状況だとお聞きをいたしておりますので、実施主体の皆様方と十分議論をしながら、先ほど言われましたクラスターの実現に向けて県も一緒になって取り組んでいきたいと考えております。
○依光委員
本当に県の取り組みが成果にあらわれてきているということを言っていただいたんだと思います。
(3)高知県広域食肉センターについて
私は、今後増頭が進めば大都市圏を中心とした外商の強化が必要となり、より高度な衛生管理による食肉処理が求められると思います。しかし、現在土佐あかうしが食肉処理されている、高知市にある高知県広域食肉センターは施設の老朽化が著しく、施設の改修や高度化が必要であると感じています。
そこで、高知県広域食肉センターについて土佐あかうしを振興していく上でどのようにお考えなのか、農業振興部長にお聞きをいたします。
○味元農業振興部長
お話のございました広域食肉センターは、土佐あかうしの振興はもとより畜産業にとって大変重要な施設でございますけれども、大変老朽化が進んでいるという実態にございます。
この2月からは、そこを支えております関係の市町村で構成をいたします広域食肉センターあり方検討委員会が立ち上がりまして、今後のあり方について検討が始まったところでございます。県もオブザーバーとして参加をしてほしいと、こういう御要請をいただきましたので副部長が参加をいたしまして議論をともにさせていただいているところでございます。
県は、今後検討会の結果を踏まえまして、支援なども含めて適切に対応していきたいと考えております。
○依光委員
先ほどおっしゃられたとおり、市町村が現在は運営、分担金を支払って運営している組織だと思います。今、あり方検討委員会というところで議論がされていると思うんですが、私自身が思うのは、市町村が広域で集まって今の高知県広域食肉センターを運営しているわけなんですが、やはり温度差が出てきているんじゃないかなと。嶺北のほうはどんどん牛がふえている状況はあるんだと思いますが、市町村によっては牛がいない市町村、そこは分担金を払うとなるとやっぱりなかなかまとまっていかんのじゃないか。そういう意味でいったら、やはり食肉を加工するというところは絶対に高度化しないと。あかうしを高く売っていく、品質、価格、県外商品と戦うためには絶対必要だと思っています。
そんなときに、沖縄の沖縄県食肉センターというところは株式会社で運営していまして、JAでありますとか沖縄県、民間企業が出資をしてやっている組織です。
そういうことを考えますと、今のやり方よりは機動力とか海外に売っていくということも視野に入れたら、やはり高度な施設は必要であるし意思決定もそれなりにスムーズにできるほうがいいのではないかなと思います。あり方検討委員会というところで議論がされるんだと思いますが、ぜひともあかうしを伸ばして、中山間の本当にいい雇用の場、所得の場になると思いますんで、ぜひともよろしくお願いいたします。
(4)県産材を活用した住宅への補助制度について
最後に、伝統的な土佐建築技術についてお聞きをいたします。
これまでの県議会でも土佐の建築文化についてお話をさせていただき、技術継承に向けて高知県にも応援をいただいております。しかし、建築基準法という戦後復興時につくられた法律により、日本の伝統的な建築技術を持つ大工さんにとってはやはり難しい時代となっております。
例を挙げれば、大工さんが建てた誇りある古民家が、今の建築基準法で見れば耐震基準が満たされておらず、改修を求められるということが多くあります。そもそも戦後復興の建築基準法は粗悪な住宅を規制するという観点から、3.5寸角という細い柱で組み、接合部を金物で補強し、間柱や筋交いを入れ、構造材ごと壁で覆うという工法です。
一方、土佐の伝統技術に根差した建物は、4寸から5寸角というような太い柱材をがっちりと組み上げます。そもそも金属が貴重品の時代からある構法なのですから、補強材としての金物はなく筋交いもありません。高度な技術を持った職人が矛盾を感じながら耐震化のために金物を使うというのは残念です。
さて、高知県では、高知県の木の需要喚起を目指して、こうちの木の住まいづくり助成事業による政策を進めており、昨年度も県産材を活用した木造住宅への支援が年間384棟の実績を上げるなど、このこと自体は非常に喜ばしいことです。ただ、補助金の活用については、県内の事業者ではありますが工務店や設計士が取り組んでいる物件が多く、さきにお話ししました地元に根差した大工さんなどにはこうした助成事業の内容がしっかりと伝わらず、結果として活用できていないと感じています。
こうした大工さんによる補助金の活用がふえれば、地元の材を直接活用する機会も高まり、さらには地元の製材業の活性化にもつながることから、地域の木材で家を建て、地域でお金が回ることになると考えます。
そこで、県産材の活用とあわせて建築に関する土佐の伝統技術を継承することにもなり、さらには中山間の活性化にもつなげていく非常に大切なこととして、地元の大工さんにもよりこうちの木の住まいづくり助成事業を活用していただけるような取り組みが必要であると考えますが、林業振興・環境部長にお聞きをいたします。
○大野林業振興・環境部長
こうちの木の住まいづくり助成事業について、県ではこれまで説明会や県のホームページなどにより制度の紹介や関係書類の作成方法などについて周知を行ってまいりました。
しかし、地元で頑張っておられる大工さんの中には、木材の合法証明や現場写真の撮影など申請に関する書類作成について煩雑だと感じておられる方、また木材を天然乾燥したものは補助の対象にならないなどの誤解があるなど、制度の内容が十分に伝わっていないところも見受けられました。
今後は、市町村や建設労組のような関係団体と連携し、事業への理解を深めていただくための説明会や個別の相談を受ける機会を設けるなど、きめ細やかな対応を行い、より多くの大工さんがこの制度を活用できるよう取り組んでまいります。
○依光委員
ありがとうございました。
この制度を地元の大工さんも使えることが余り認識されていないということは自分も問題に感じていまして、昔の大工さんというのはやっぱり職人かたぎのところもあって、何か残念やなとすごく思っています。
ただ、木の価値を一番わかっている方は昔の伝統技術を持っている大工さんだと思っています。今、板材であるとか柱材の値段がなかなか上がってこんというところで、やっぱり需要がなかなか伸びないと、そういう意味で言うと、外材が多いからということなんでしょうけれど、外の細い柱で今の建築基準法の中でプレハブ住宅を建てると。気密性のある家がいいんだということで、日本建築というとやっぱり冬は寒いんです。ただ、夏は涼しいんですよね。だから、いいところ悪いところで言ったら、やっぱり日本の伝統的なところが日本人の健康にもいいんだと思いますし、最近の話題で言ったら、梼原のゆすはら座を見た隈研吾さんがあそこでインスピレーションを得て、今度の新国立競技場までつくるに至るということはやっぱり木そのものの素材の力、大工さんの力だと思うんです。やっぱりそういうところを高知県もしっかり大事にしていただきたいし、そうすることが地域にお金が回ってくることになるんだと思います。しっかり私も宣伝もしていきますんで一緒になってやっていただきたいと思います。
用意しておりました質問の全部のお答えをいただきましたので、私の一切の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○桑名委員長
以上をもって、依光委員の質問は終わりました。
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○桑名委員長
以上をもちまして、本委員会の質疑並びに一般質問を終了いたします。
委員並びに執行部、報道関係各位におかれましては、長時間にわたりまことに御苦労さまでございました。
予算委員会は、平成8年2月定例会から始まってちょうど20年を迎え、この間提出された予算案などについてさまざまな視点から一問一答方式による質問を行い、議会の活性化に貢献してきたところでございます。一問一答方式による質問につきましては、来年度から本会議に場を移しましてさらなる議会の活性化を図ることとなり、今回が最後の予算委員会となりました。20年間にわたり関係者の皆様には大変お世話になり、ありがとうございました。また、今年度をもって退職される方々には、今後ますますの御活躍を御期待申し上げるところでございます。これをもちまして、平成28年2月定例会の予算委員会を閉会いたします。
午後4時46分閉会
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