目で見る土佐(上)県民性

一生懸命土佐に生きて40
「目で見る土佐(上)県民性」
依光裕 著
昭和十二年七月、日中戦争が始まると、八月には高知の歩兵第四十四連隊も中国戦線に動員された。率いる連隊長は陸軍参謀本部出身の和知鷹二大佐。この時期、陸軍は個々の連隊装備を秘匿するために連隊長名を部隊名に冠したので、四十四連隊は「和知部隊」として出征している。
私は「四十四連隊物語」では「(一)旅順要塞に玉砕す」も担当したが、台本づくりの過程で、この連隊の損耗率(戦死者と負傷者の比率)が突出して高いことを知った。
和知鷹二氏は陸軍中将で敗戦を迎え、神奈川県藤沢市に隠棲されていた。「なぜ、四十四連隊の損耗率が突出して高いのか。ご教示賜りたい」との私の依頼状に対しては、「敗軍の将、兵を語らず」の返書がきた。
諦めずにアプローチを続け自宅での取材を許されたが、テレビカメラの前で和知氏は多くの土佐の若者を戦死させたことを詫びたのち、要旨、次のような話をされた。
参謀本部は戦線に歩兵連隊を投入する際には「県民性」を重視した。高知の県民性は「短気」。将棋の駒に例えると香車。ブレーキもバックギアもない自動車同様で、これほど突撃と敵前上陸に適した県民性はない。日露戦争から第二次大戦まで四十四連隊は常に最前線、激戦地に投入された。高知の消耗率の高さの遠因は県民性による。
戦時中に、高知という地域が、いかに多くの人材を失ったかが分かる。
仕事柄、県内各地に出かける。
そこで大きなお墓をよく見かける。
戦死した家族のために、建てられたもの。
家族の愛情を感じると共に、地域でとても重要な役割と期待を背負った人材であったのだろうと想像する。
もし彼らが戦後生き残っていれば・・・。
高知県経済が現在、他県より落ち込んでいるのは、戦争が原因ではと考えることがある。
きっとそうに違いない。
全文は以下
全て読んで頂きたい内容です。
高知新聞朝刊 2006年08月08日
一生懸命土佐に生きて40
「目で見る土佐(上)県民性」
依光裕 著
開局の歴史の浅い高知放送のテレビ製作部門は、地域の古い写真がライブラリーに少ないという悩みを抱えていた。
短期間に多くの古い写真を収集したい。その方法として私が企画したのがテレビの特別番組「目で見る土佐・幕末から昭和まで」である。
昭和四十九年末から県民に提供を呼びかけると、わずか六ヵ月で約六千点もの写真が寄せられた。それを分類し、二十六本のシリーズ番組に構成。私は十本を担当したが、そのうちの一本「四十四連隊物語(二)和知部隊と支那事変」には格別の思いがある。
昭和十二年七月、日中戦争が始まると、八月には高知の歩兵第四十四連隊も中国戦線に動員された。率いる連隊長は陸軍参謀本部出身の和知鷹二大佐。この時期、陸軍は個々の連隊装備を秘匿するために連隊長名を部隊名に冠したので、四十四連隊は「和知部隊」として出征している。
私は「四十四連隊物語」では「(一)旅順要塞に玉砕す」も担当したが、台本づくりの過程で、この連隊の損耗率(戦死者と負傷者の比率)が突出して高いことを知った。
和知鷹二氏は陸軍中将で敗戦を迎え、神奈川県藤沢市に隠棲されていた。「なぜ、四十四連隊の損耗率が突出して高いのか。ご教示賜りたい」との私の依頼状に対しては、「敗軍の将、兵を語らず」の返書がきた。
諦めずにアプローチを続け自宅での取材を許されたが、テレビカメラの前で和知氏は多くの土佐の若者を戦死させたことを詫びたのち、要旨、次のような話をされた。
参謀本部は戦線に歩兵連隊を投入する際には「県民性」を重視した。高知の県民性は「短気」。将棋の駒に例えると香車。ブレーキもバックギアもない自動車同様で、これほど突撃と敵前上陸に適した県民性はない。日露戦争から第二次大戦まで四十四連隊は常に最前線、激戦地に投入された。高知の消耗率の高さの遠因は県民性による。
司馬遼太郎さんは「歴史を紀行する」(昭和四十四年発行)で、訪問した土佐の高知の飲み屋街での体験を次のように書かれ、高知のもう一つの県民性「単純」を示唆されている。
議論である。
どの屏風のかげでも、さかんに議論をし、倦むことを知らない。こんどの旅行中でも背中あわせの一座から、すさまじい議論をきいた。
「犬が利口か、猫が利口か」
初代学生横綱の田内貢三郎さん(高新企業・故人)は、私に「淡白」を挙げた。土佐人の相撲は勝つも負けるも一方的、勝負を諦めるのが早く「水入りの一番を見た記憶がない」そうだ。
以来、私は高知の県民性を「土佐の三タン」と呼び、短気・単純・淡白を挙げることにしている。
短気×単純×淡白=土佐人ということになるが、その土佐人(男と女)の典型を紹介しよう。土佐では自分が放った「おなら」を他人になすくりつけることを「横屁をかける」といった。
鰹漁師が船頭の家へ集まり、車座になって世間話をしよったと思いなんせ。その傍で船頭の娘が針仕事をしよったが、これが「スーッ」とやったあげに隣の安おんちゃんに、こう言うて横屁をかけたげな。「安おんちゃんは、お腹をこわしちゅうの?」
ところが、やすおんちゃんが、こう言うてはみかえったきに、まっぽが暗がった。
「なんつや。おらが腹をこわしちょっても、おんしが屁をひるこたないろが」
(2007.04.30アップ)
この記事へのコメント